(蔵の見通しのよいところにある杜氏部屋)

 「世嬉の一・酒の民俗文化博物館」(左下写真)は、昭和61年に世嬉の一酒造の最大の仕込み蔵を改修して作られた。

 世嬉の一酒造は、豪商「熊文」の後を受け、佐藤徳蔵が大正7年「横屋酒造店」を設立したのが前身である。当時三千数百石の仕込み量を誇ったが、昭和18年の国策による企業合同により、この地方の14社の酒造会社と合併し、両磐酒造が生まれた。昭和32年に再び分離独立し、現在に至っている。

 現在地での酒の仕込みは昭和56年まで行っていたが、現在は、コスト低減とより良い酒造りを求めて、紫波町(しわちょう)で共同醸造をしている。

 この酒蔵群は、大正7年から昭和初期のもので、酒蔵としては新しいものである。しかし、中庭を囲み各種の材料による蔵(土蔵・石蔵・煉瓦蔵など)が立ち並び、日本では珍しいヨーロッパ的な雰囲気の空間を形成している。
 博物館となった土蔵は、梁組などに西洋の建築技法を取り入れ、東北最大級のきわめて大規模なものである。世嬉の一で実際に使用していた酒造りの道具(右写真)を主体に、1600点ほどの資料が展示されているが、一番の自慢は大正8年に酒の仕込み蔵として作られた蔵そのもの。

 この蔵が酒造りに使われなくなった以降、全ての蔵を取り壊し、大型店などを建てる話がいくつも持ち込まれた。しかし、これだけ大きな蔵が残っているところはない、地域に対して責任があると拒み通した。博物館にしたきっかけは、蔵を保存したかったからだと。

 博物館の外、レストランや売店・試飲コーナーも併設されており、中庭での夏のビアガーデンや秋の月見の宴は、一関の風物詩のひとつになっている。
 JR一ノ関駅から徒歩で約10分。
 車は東北自動車道一関ICから約10分。
 休館日は毎週火曜日、祝日の翌日。

 問い合わせ先
 世嬉の一・酒の民俗文化博物館
   岩手県一関市田村町五番42号
   電 話(0191)-21-1144