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バラ科の花は白から紅にかけて、ピンクを中心とした色彩が多い。桜色のサクラ、桃色のモモは言うにおよばず、ウメ、アンズ、リンゴ、ナシ、ボケ、カイドウと身近な花木を思いうかべてもらえばいい。ヤマブキは黄色じゃないかとの意見はひとまずおく。そのような中で、桜色ならぬ緑色のサクラがある。その名は「御衣黄」と書いてキョイコウと読む。 一関遊水地事業の工事着手二十年を記念して、狐禅寺に百種千本の桜公園を企画した頃のことである。それは日本のさくらの会等を訪ねて指導を請うところから始まったのだが、たまたま多摩森林科学園をおとずれた時のこと。一通りの説明を受けた後、「珍しいサクラがあるから是非見ていけ」と案内されたのが御衣黄だったという。これならば釣山公園にもあると一瞬思ったが、神妙にご高説を受けたまわってきたとのことである。 さて御衣黄である。今では釣山公園のほか、一関遊水地記念緑地公園にあり、五月上旬、ちょうどソメイヨシノが一斉に咲きほこって新緑の季節を迎える頃、ひっそりと花を咲かせる。葉の緑に混じって、緑の花を咲かせるものだから全く目立たない。八重咲きで、花は葉緑素をもち光合成を行うことから、花は葉の変化したものであることがわかる。一関遊水地記念緑地公園のものは平成六年度に植栽したものだが、釣山公園のそれはいつ植えたものかはっきりしない。わずかに一本のみが園路からそれたところにある。 御衣とは、国語辞典の説明によると「天皇、貴人の衣服、お召し物」の意なそうで、そうすると前の説明は失礼な話で、「五月上旬に緑色の高貴な花を咲かせる」とでも解説すべきかも知れない。江戸幕府は、珍花として珍重したという記録があるそうだから、かなり古い時代から知られていることがわかる。 オオシマザクラ系の里桜(園芸品種)で、園芸品種ゆえにか、一樹のみのときは気がつかなかったが、緑とはいえ花色はバラエティにとむ。 (岩井憲一) |